音声: | Yumiko Ema |
(尹喜と伯陽の会話のやり取り)
「無理を承知でお願いします。 風の噂で聞きました。あなたは人生最大の秘密を知っていると。 道(タオ)という究極の教えを説いていると。 何卒私にその教えを書き残して行ってください。」
尹喜が深々と頭を下げる中、伯陽は深く何かを考えるようにゆっくりまぶたを閉じると 「わかった。」とだけ言い残してその場を去った。 その数日後、彼は五千字余りの言葉で綴られた手紙だけを残して、どこかへと姿を消した。
時を遡ること、およそ2500年。古代中国は、周の国でのお話し。 この置手紙こそが、現在も尚、語り継がれる東洋哲学の巨人、老タン-老子による道徳経である。